秋の夜長と、ドライジン
ちょうど今どき、夏の終わりと秋の始まりが交差するころに、無性にドライジンを飲みたくなる。ジンは、熱帯地方で愛飲される印象があるのだが、私の身体は、この秋口になってから、ドライジンを欲しがる。
ジンを知るきっかけは、小説だった。名探偵がセンチメンタルな気分に浸りながら、ジンとライムジュースを使ったカクテルを飲んでみたり、小説の主人公に、ジンはゴードン(に限る)と言わせてみたり、女流作家の淫靡な小説のなかに、タンカレーのジンが登場したりして、私は結局、ゴードンを愛飲した。ゴードンのドライジンは、ジンの中でも癖が強く、私の好みに合った。凍るほどの温度で冷やしたゴードンを、ショットで飲むのがおいしかった。一方、タンカレーは、マティーニなどカクテルで、滑らかで優しい飲み口がよかったので、マティーニはタンカレーで作ってもらっていた。
私の誕生日プレゼントのようなものが、誕生日とは関係のない日に届いたのは、曇りが続いた今年の夏だった。特に前置きもせず、ぶっきらぼうに送られてきたジンは、なんとも言えない味のジンであったが、何種類もの香りを楽しめる、香水のような感じのジンであった。日本のジンを、日本人の作家が作ったガラスの器で飲んで、あまり暑くない夏を楽しんでいた。もちろん小さな瓶は、3日でなくなってしまった。
瓶は、なぜか、後生大事に取っておいている。
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